行政書士は国の法律に基づく国家資格です。国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。
国家資格の分類
法律によって社会的地位が保証されているため、社会的信頼性が高いです。国家資格の種類は4つに分類されています。
国家資格は、4つに分類されます。
①業務独占資格
有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格。
例:行政書士、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、海事代理士、弁理士、医師、薬剤師、一級建築士、美容師など
②名称独占資格
有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格。
例:中小企業診断士、 社会福祉士、介護福祉士、技術士、栄養士、保健師、保育士、調理師など、
③設置義務資格
特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている資格。
例:宅地建物取引士、運行管理者、職業訓練指導員、衛生管理者、食品衛生管理者など
④技能検定
業務知識や技能などを評価するもの。
例:技能検定など
業務独占資格と名称独占資格の比較
某大手資格学校では、行政書士試験、税理士試験、中小企業診断士試験、宅地建物取引士試験などの講座がラインナップされています。これらの資格が、どの分類に入るかを理解したうえで受講を決めたほうがいいでしょう。
一般的に、行政書士試験よりも、中小企業診断士試験の方が難易度が高いと言われます。しかし、独立開業を目指すのであれば、名称独占資格である中小企業診断士よりも、独占業務のある行政書士の方がいいかもしれません。本来は、やりたいことを優先させて勉強するべきですが、独占業務があるというのは、仕事をしていくにはアドバンテージになります。
行政に対する補助金申請業務を例に説明します。
中小企業診断士は、中小企業経営の分析をし、必要な助言等をする知識を学びます。そのため、事業に関する補助金の経営計画書の作成の助言などについて仕事をすることがあります。確かに、経営計画書の作成についての知識はあるのですが、作成までしてしまうと、行政書士法違反に問われる可能性があります。
一方、行政書士は、官公署(行政)へ提出する書類の作成として、補助金申請書類の作成を行い、報酬を得ることができます。しかし、行政書士は、企業経営についての知識の担保はされていないため、経営計画書の内容を考えることまでは難しいでしょう。行政書士の場合は、補助金が採択されるための要件を把握し、申請者である企業が考えた経営計画を要件を満たすような形に体裁を整えるという役割になってくると思います。もちろん、MBAを取得している行政書士などであれば、経営計画の助言なども期待できます。
この2者の違いは、中小企業診断士の場合、最終的な申請書類である経営計画書の作成までは行えないということです。ここは、争いがあるかもしれませんが、業務独占がある行政書士が有利になる業務といえます。
中小企業診断士で補助金申請をメインにしたい方は、行政書士のダブルライセンスがいいでしょう。中小企業診断士は、試験科目で経営法務を学んでいるため、行政書士試験の学習もしやすいと思います。
国家資格以外に民間の資格というものがあります。民間資格も商標登録などをして、民間資格試験合格者しかその名称を使用できないようになっています。
例えば、相続診断士、CFP・AFP(ファイナンシャルプランナー)、インテリアコーディネーターなど
こういった資格は、国家資格が無い方や業務実績が無い方など、肩書のためにとることもあると思います。
ただし、CFP・AFP、インテリアコーディネーターなどは、業界(銀行、建築など)ではそれなりの知名度がありますので、転職などに有利に働くと思います。
日本人は、資格や肩書にこだわりがある方が多いので、こういった資格が乱立していると思います。
以下が士業の主な独占業務です。
資格名称 | 独占業務 |
行政書士 | 官公署などに提出する書類の作成・申請代理、契約書の作成代理など |
弁護士 | 訴訟事件・非訟事件の代理、法律にかかわる業務全般など |
司法書士 | 土地や家屋・法人登記の申請、民事訴訟手続の書類作成など |
税理士 | 税務相談、税務代理、税務書類作成、税務訴訟の補佐など |
公認会計士 | 財務書類の監査、財務書類の内容を証明など |
社会保険労務士 | 社会保険関連の手続など |
海事代理士 | 船舶登記の手続など |
弁理士 | 知的財産関連の手続など |
土地家屋調査士 | 土地・家屋の調査や測量、不動産登記(表題部)の手続など |
上記で一般的に知名度があるのが、弁護士と税理士かと思います。その他の士業は、一般的にはあまり知られていません。法学部や商学部出身者であれば、士業の存在を知っているでしょう。
肩書に使う場合は、「行政書士(国家資格)」などと書いておくと、相手から信頼されるかもしれません。しかし、肩書のみで依頼が来るかは別問題です。
「相続手続ができる」「外国人のビザ手続ができる」など、何ができるかを伝えた方が依頼が来る可能性は高いと思います。
話は脱線しましたが、行政書士の名前だけで、信用を得ることは、限られたケースとなります。
まとめますと、実務をやるのであれば、独占業務がある資格を取得する。業界での評価や能力値を延ばすのであれば、名称独占の資格も有りかと思います。