特定行政書士は、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等、行政庁に対する不服申立ての手続を代理し、その手続について官公署に提出する書類の作成を業とすることができます。
特定行政書士の制度は、平成27年12月27日に施行された改正行政書士法により創設されました。法改正前、業として行政不服申立手続代理を行えるのは、基本的に弁護士のみでしたが、改正により行政書士(特定行政書士に限る)も扱えるようになりました。
ただし、裁判手続である行政事件訴訟に発展した場合は、特定行政書士は取り扱うことができず、弁護士のみが扱えるようになります。
研修と考査試験に合格する必要がある
特定行政書士になるには、行政書士登録後、行政書士会が実施する法定研修を受けた後に考査(試験)に合格しなければなりません。
特定行政書士の研修の関門は、考査(試験)です。合格基準は約6割となります。明確な基準点が示されていないため、調整が入っていると思います。以下が、考査のまとめとなります。
合格率は、6~7割いると言われており、決して難しい試験ではありません。しかし、逆に言えば、3~4割落ちているということです。現役の行政書士でも試験に落ちるため、油断をしていると落ちてしまいます。
行政書士試験よりは難易度は優しいです。問題文も短いですし、行政書士試験合格後、知識がまだ残っている内は、苦労せずに合格することができます。
特定行政書士の運営は、都道府県行政書士会が実施します。そのため、考査試験の運営側に、知り合いに行政書士がいたりして、「●●先生、受講してるのだな。」とわかります。特定行政書士になると、日本行政書士会連合会の行政書士名簿(ホームページで公開)に特定行政書士であることが追記されます。そのため、知り合いの行政書士に合否がわかってしまうというプレッシャーがあります。
新人のころであれば、知り合いの行政書士が少ないと思うので、特定行政書士は早めに受講するのがおすすめです。
【特定行政書士法定研修考査(試験)】
試験方式 | マークシート 択一式(4択)問題 |
試験時間 | 2時間(14時~16時) |
出題数 | ①行政法総論を含めた手続法、救済法:20問②その他倫理等:10問合計30問 |
合格基準 | 約6割 |
※研修の受験資格 | 行政書士(申込時点において、行政書士名簿に登録されている者) |
※考査の受験資格 | 講義(18時間)受講率100%の受講者のみ |
試験科目 | 特定行政書士法定研修の内容 |
試験日 | 10月第3日曜日 |
試験会場(考査) | 全国47都道府県行政書士会の指定会場 |
【特定行政書士法定研修のカリキュラム】
科目 | 時間 |
行政法総論 | 1時間 |
行政手続制度概説 | 1時間 |
行政手続法の論点 | 2時間 |
行政不服審査制度概説 | 2時間 |
行政不服審査法の論点 | 2時間 |
行政事件訴訟法の論点 | 2時間 |
要件事実・事実認定論 | 4時間 |
特定行政書士の倫理 | 2時間 |
総まとめ | 2時間 |
合計 | 18時間 |
考査(試験)の対策
考査試験は、行政法を学ぶことにつきます。行政法の中でも、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法をしっかり学びます。
直近で行政書士試験を受験した方は、行政書士試験のこれらの法律を復習します。行政書士試験から2年以上離れた人は、研修で配られた資料や書籍を中心に復習します。
また、日本行政書士会連合会ホームページの中央研修所に、特定行政書士の考査対策のコンテンツが提供されている可能性があります。不安な方はそちらも勉強するといいでしょう。
倫理やその他の内容は、10問程度であり、こちらに時間を割くよりは、行政法に力を入れるべきです。倫理その他は、研修の講義を聞いた内容で回答すれば十分です。それに、正答を2択まで絞れば、確率的には5割はとれます。
考査(試験)は、油断をしていると落ちてしまう試験です。受験者が行政書士登録者のみのため、合格率が高いですが、しっかりと対策をした上で試験に臨みましょう。